一般社団法人 日本看護質評価
改善機構 代表理事 上泉 和子
Copyright ©2015 JINQI All Rights Reserved
QIチャンピオン賞は、構造・過程・アウトカム(満足度)において、得点および改善度を考慮し、最も優れていると考えられる病棟に送られる賞です。2023年度は下記の病院が受賞されました。クリックいただくと、各病棟の取り組みをご覧いただけます。本表彰は隔年で実施しています。
宮崎大学医学部附属病院
集中治療部 看護師長 新谷真美
このたびは、チャンピオン賞という名誉ある賞をいただき、大変光栄に思っております。
病院や病棟に明るい話題を届けることができ、深く感謝申し上げます。
当院は、604床を有する宮崎県唯一の大学病院で、高度急性期病院、特定機能病院などの機能を有し、宮崎県民の医療の最後の砦となるべく職員一丸となって診療にあたっています。集中治療部は16床のセミクローズICUで、重症度の高い患者さんを県内各地から24時間、365日受け入れています。
当院看護部は2008年から日本看護質評価改善機構の評価を受審しており、今年度で15回目の受審となりました。毎年、10月から11月に調査を実施し、各部署での取り組みを評価する機会としています。自部署の看護の質を可視化し向上させていくため、第3者評価を受けることの重要性を理解し、現状分析を重ねながら改善戦略を考えています。
2020年度のインシデント分析からMDRPU(医療関連機器圧迫創傷)の発生率が高いことが分かりました。そこで2021年度はMDRPU発生率低減に向けて取り組みました。構造の側面では、MDRPU好発部位を漏らさず観察する事を目的に「皮膚の観察シート」を作成し、COVID-19患者の腹臥位療法中の体圧を測定し、確実な除圧を継続しました。過程の側面では、シートを活用してケアや治癒の経過を可視化し、必要な観察とケアを実施しました。定期的に師長やリーダー、患者担当の看護師、皮膚排泄ケア認定看護師のチームでベッドサイドをラウンドする「褥瘡予防ラウンド」を開始し、ケアの継続を確認しました。成果としてMDRPU発生率の低減に繋げる事ができ、現在も取り組みを継続しております。
昨年度は、COVID-19拡大による面会制限や治療の高度化・複雑化、家族関係の多様化によって生じる認識のずれを解消するために、患者さんや御家族の意思決定支援に取り組みました。構造の側面では、院内の「ICの対象となる侵襲を伴う医療行為のリスク分類」に沿って、ICUで行われるすべてのICに同席しました。また、説明室のレイアウトを変更し、お気持ちを表出しやすいように整えました。過程の側面ではICU入室前のオリエンテーションで、患者さんや御家族の思いや希望、心配事について伺い、看護ケアに反映させました。これらの取り組みの継続により、アウトカムの「家族の絆を強める」の項目得点向上に繋がり、構造・過程・アウトカム(満足度)全てで最高点を頂くことができたのではないかと思います。
今年度は、退院される患者さんや御家族が、退院前にICUにお顔を見せてくださることがとても増えました。私たちにとって、何にも代えがたい嬉しい瞬間です。今後も、頂きました栄誉を励みに、看護の質向上に寄与して参りたいと思います。
GCU看護師長 堀岡循子
(前任看護師長 向井和恵)
当院は病床数612床で、県下唯一の大学病院として高度急性期医療、特定機能病院としての役割を担っています。GCUは10床で、地域周産期母子医療センターとして重症度の高い子どもがNICUでの急性期の治療を終えた後に患者家族が安心して家に帰ることができるように育児、退院支援を行っています。「安全な医療・看護を提供し、ご家族と共に赤ちゃんの成長を見守ります。赤ちゃんを中心としたファミリー支援に努めます」をNICU・GCUの理念としています。
小児医療分野では、高度な医療を必要とする子どもが増加する中で、NICUに長期に入院している子どもの在宅移行支援などが社会的課題となっており、令和3年度には医療的ケア児支援法が施行されました。医療的ケアを継続しながら家庭で生活する子どもと家族が安全により充実した生活を送っていただくためには個別の包括的ケアの推進と地域医療システムの充実を図っていくことが必要です。今まで以上に多職種を交えた支援が必要になってきており、私たちに求められている役割も多様になってきています。
昨年度は、育児手技の進捗状況を家族と共有できるツールの作成に取り組み、活用しました。これにより、医療者の一方的な指導ではなく、家族の思いを確認し、家族のペースに合わせながら個別性のある育児支援を行うことができています。また、長時間面会や夜間面会を積極的に行うことにより、昼夜を問わず1日の様子がわかるようにしています。限られた面会時間の中で、家族が赤ちゃんとの退院後の生活をイメージし、安心して自宅に帰ることができるかを考え、家族の意向に沿った退院支援を行っています。
また、GCUならではの発達支援のためのリハビリカンファレンスを多職種で行い、自宅で行えるポジショニングや遊びなど具体的なケアを家族と共有しながら看護を実践しています。
コロナ禍においては、面会制限など様々な制限がある中で、育児指導や家族への医療的ケアの指導は継続していかなければならない課題がありました。そこで、周産期医療における面会の重要性を説明し、面会時には家族の健康管理を行いながら感染予防対策を強化し、面会制限をせずにGCUの看護を実践してきました。その結果、今回の質評価では、アウトカムにおいて患者満足度がすべての領域において全国平均以上となりました。
GCUの役割として当たり前にやるべきことを実践してきましたが、今回このように看護サービスが患者や家族から高く評価され、特別賞をいただき大変光栄に思っております。スタッフも大変喜んでおり、これを励みに今まで以上に質の高い看護を実践していきたいと思います。